太陽の塔の内部を見学する

 おでかけ@大阪

先月末ごろですが(時節柄一応言うとく)、JAF会員限定の太陽の塔内部見学ツアーに行ってみた。

2018年に太陽の塔の内部公開が再開された時に申し込もうとしたんですが、予約が一杯でなかなか取れず。

あれから2年経ち、今年はコロナで外国人旅行者が皆無なこともあって予約が取りやすくなったみたい。

大阪、特に万博会場に近い大阪北部では未だに万博の影響が濃く残っており、例えばPTAの会合でおっさん達が集まると「大阪万博へ何才の時に行ったのか」が世代を推し量る指標になっています。

「4才の時やったわ」とか「小2やった」とか「俺もう中学生やったわ、アハハハハ!」という会話はデフォ。

そんな中、もし「まだ生まれてませんわ」と言う人がいると、「えー!お前まだ生まれてないんか!」「こんな奴がPTAに出てくるようになったんか!」とか、愛のある罵詈雑言をいただくのもお決まりになってます。

さて、万博記念公園の中央口へ。

大阪中央環状線と中国道をまたぐこの橋を渡るのって、何年ぶりやろ?

てなぐらい、久しぶり。

中央口のJAF特設ブースで入園券一式をもらい、入場ゲートを越えるとすぐに太陽の塔。

まるで入園者を出迎えてるかのよう。

入園してすぐにメインの太陽の塔が現れるので、出オチ感がないとも言えない。

太陽の塔へ近づくとその大きさに圧倒されるだけでなく、半世紀も前に高さ70mのこんな奇抜な形の建物を建ててしまう岡本太郎と、建設費を度外視できた高度成長の経済力に、万博から50年後の未来に生きる私たちはただただ羨望するしかありません。

太陽の塔には4つの顔があり、正面からみてお腹にあるのが現在を表す「太陽の顔」、上の金ピカの顔が未来を表す「黄金の顔」。

2年前に耐震補強を受けたとはいえ、やっぱり両手を広げた部分の負荷は大きいようで、ちょうど腕の付け根、脇の部分にはぐるっと筋が入っている。

これは意図的なのか、自然に入ってしまったのかはわかりません。

背中にあるちょっとこわい黒い顔が、過去を表す「黒い太陽」。

この黒い太陽は陶板で出来ており、下から見ると鼻と口が立体になっているのがわかる。

指定された時間に太陽の塔の背面に集合。

気が付くと同じ時間に入場する同志が結構集まっており、スタッフから注意事項を聞いたのち、スロープを下って太陽の塔の中へ。

私は後ろからつつかれることなくゆっくり見学したいと思い最後尾で入ったんですが、これ、無意味でした(^_^;)

スロープを下る途中で右腕の下も見てみると、やっぱり脇に筋が入っている。

もしかして腕回る?

地下の入口には、ちゃんと表札も。

中に入ると、まずは太陽の塔のデッサンが並んでいます。

万博開催のおよそ3年前、1967年6月20日時点ではまだ形にすらなってない。

6月26日になって少し塔っぽくなりましたが、この時点ですでに内部のらせん構造が描かれています。

1967年7月17日には、顔が付いてかなり太陽の塔っぽくなってきた。

お腹の顔がたくさんあるけど。

1967年8月8日の日付が入ったこのデッサンは、メキシコのPalece HOTELの紙に描かれてますが、ちょうどこの頃、テーマ館プロデューサー就任の要請を受けた岡本太郎が中南米を旅行しており、この旅行先で描いたものではないかと。

1967年9月9日、最後のデッサンで太陽の塔の完全形と、その横には青春の塔っぽいものも。

こうしてデッサンを見ていくと、なんだか受精卵から細胞分裂して体になっていく過程のようにも感じたり。

通路の横の窓を下からのぞきこむと、真下からのアングルで正面の顔が見えるので、まだここは太陽の塔の体内ではないようで。

その先には、世界各国の仮面と像が掛けられている。

万博当時の地下展示「過去:根源の世界」の雰囲気が再現されているそうですが・・・

ある意味コワモテのお面がズラーっと並んでるので、小さい子どもなんかは怖いんじゃないかと。

真ん中には、かつて存在していた人間の祈りや心の源を表す太陽の塔の第4の顔「地底の太陽」がある。

ただ、地底の太陽は万博閉幕後に行方不明になってしまい、現在の地底の太陽は復元されたもの。

復元するにも大変な苦労があったようです。

地下展示室にはかつて「いのち」「ひと」「いのり」をテーマにした部屋がありましたが、現在はこの3テーマをモチーフにした2分ほどのプロジェクションマッピングが地底の太陽に上映され、入館者にこの映像を見せることで、この先の展示ブースへ入る人数を調整しています。

今回、待っている間に2回映像を見た。

2回目の上映では列が進んでので、見る角度も変わってます。

いよいよ太陽の塔の胴体の部分にある「生命の樹」へ。

生命の樹は、地底から高さ41mまでそびえ立つ1本の樹に、生命の起源の単細胞生物から人間に至るまでの進化の過程を表しています。

一番下の地面には、アメーバやポリプなどの原生生物がいて・・・

樹を上っていくにしたがってクラゲ、三葉虫のオブジェが絡まり・・・

さらに上がると魚類、両生類、爬虫類が樹の枝にいて・・・

鳥類、哺乳類と進化していく様子が表現されています。

撮影可能なのは、この生命の樹の根元の地面までで、樹の上に通じる階段からは撮影禁止になるので、下から見上げた写真しかありません。

下から見上げるだけでも、岡本太郎の芸術に圧倒されます。

ちょうど太陽の塔の脇の高さにあたる最上階まで上がると、小さな人間がポツンと立ってますが、樹はさらに続いていて、その先端は光が差し込む空間に突き刺さっている。

なんだか進化には終わりはないのだということと、生命の根源は太陽なのだというメッセージが込められてるようで、感動すら覚えたり。

万博当時は、内部のエスカレーターを乗り継ぎ、脇から右腕の中のエスカレーターを通って手首のあたりから大屋根へ排出される動線になっていましたが、現在は塔内部の別の階段で下るようになっています。

今でも腕の中を見ることはできますが、引き込まれそうな幻想的な雰囲気。

観覧してる若い人は目の前の展示物の感想を言い、万博を知っている年配の人は当時の記憶をたどりながら観ているようでしたが、初見の私は、もし50年前に今の年齢の自分が見たらどう思ったやろか?なんてことを考えながら観てました。

たぶん、幻想感などは全くなく「何やこれ?」とか現実的なことを言うてたんじゃないかと。

太陽の塔から外へ出ると、一気に現実世界に引き戻された感が強く出る。

太陽の塔の周りは遊歩道になっていて、間近に迫力を感じることができます。

周辺には、ライトアップ用のLED照明も。

訪問したこの日は、まだコロナの赤信号が出る前でしたが、光の加減なのかほんのり赤く見えたり。

太陽の塔を説明した碑もある。

帰る頃にはすっかり日も落ち、未来の太陽の目も光ってます。

大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」でしたが、進歩、つまり未来を称賛する博覧会で、生命の起源や進化の過程というテーマと逆行したパビリオンを作ってしまう信念と、大胆さと、懐の深さに改めて感嘆してしまう。

造られてからまだ50年の歴史しかありませんが、すでに大阪城、通天閣と並ぶ大阪のシンボルになるほど愛されていることにも納得。

次の機会には、大阪万博に行ったことのあるおっさんと、当時の様子を聞きながら見学してみたいもんです。

 おでかけ@大阪

Posted by 管理人