300系新幹線のシート地の話

 乗り物@新幹線

新幹線マニアック話の第2段!

今回はちょっと仕事がらみなんですが、300系新幹線の裏話です。

去る1992年3月、JR東海は新型新幹線「のぞみ」の商業運転を始めました。
主に東京-新大阪間の輸送力増強を目的に、従来の最高速度であった220km/hをより高速化して、270km/h営業運転するために300系新幹線を開発したもので、 高速化のために開業から30年振りの大幅なスペック変更を行ない、その一つに大幅な軽量化が挙げられます。

一般によく知られている軽量化の方法としては、アルミボディーや軽量な台車(ボルスタレス台車)がありますが、 隠れたところで座席シートについても大幅な軽量化が実施されました。

300系新幹線の開発にあたり軽量化の目標は、座席シートを含んで1両あたり45t とされ、 従来の60tから約25%軽量化しなければなりません。

この45tの根拠は、300系の量産に先立ち作られた試作車両(現300系9000番台)の走行実験により、台車1軸あたり11.3t 以下であれば270km/hで営業運転しても、騒音や振動を従来レベルで抑える ことが出来るという結果から来ています。

特に座席シートは、100系では1席あたり29kgでしたが、300系では12kgとされました。

この話を聞いたときには「そんな無茶なー」と思いましたが、座席シートは搭載数が多く、軽量化効果が大きいのです。
また、航空機では既に軽量化座席があるので、こういった厳しい軽量化が課せられることとなりました。

新幹線の座席にはモケット地が使われていますが、このモケット地に対しても軽量化要求があり、重量は1平方メートルあたり450g以下で茶色系のデザイン、しかも従来の難燃規格に合格することでありました。

モケット地は電車の座席のほとんどで使われている起毛した織物で、長期に使用すると摩耗してきます。
よく、おしりと背中の部分だけ摩耗して、色目が白く変わってるシートを見かけますよね。

国鉄時代にはこの摩耗に耐える為、モケット地の素材はナイロンとウールを混ぜたもので、重量は1平方メートルあたり600g『以上』とされ、他にも織り方や厚さなど細かく規定されており、実際には1平方メートルあたり700gのものが使われていました。

これに対し300系新幹線では、軽量化優先で初めて上限が設けられ、またモケット地の素材の制限も取り払われました。

各モケット地メーカーが開発競争を行なった結果、東洋紡製の難燃ポリエステル『ロフェラ』で作ったモケット地で、 JRの要求した性能をクリアーすることが出来ました。

当初は、グリーン車用も普通車用も1平方メートルあたり450gとされていましたが、グリーン車用については高級感を出す為に厚みを持たせた結果、最終的に1平方メートルあたり600gとなりました。

さあ、これでめでたしめでたし!

とはいきませんでした・・・

最初の300系車両(J編成)が作られ営業運転が始められた訳ですが、ここで思わぬ落とし穴が!

営業運転を重ねるにつれ、普通車の喫煙車両の座席に小さな穴が開いているものがだんだん増えてきました。

従来のモケット地はナイロンとウールの混紡品だったので、ぽろっとタバコの火種を落としてしまっても、黒く焦げて炭化するだけでした。
ところが300系新幹線では難燃ポリエステルを用いたので、タバコの火で繊維が溶け穴が開いてしまうことに。

このためJRは、急遽モケット地メーカーに対し、普通車用モケット地の再検討を要求しました(特にJR西日本からは強い要求がありました)。

ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は熱で溶けてしまいます。
綿やレーヨン、ウールなどは焦げるけれど溶けません。

まず、従来のナイロンとウールの混紡品をベースに検討しましたが、この素材では軽量化をすると著しく摩耗が激しくなりました。
航空機のシートに使われているウール素材のモケット地でも、やはりJRの要求する重量では耐久性が劣る結果となりました。

最終的にナイロンとレーヨンの混紡品に難燃剤を塗布したモケット地で要求性能をクリアー出来るものが得られ、使われることとなりました。

これが改良モケット布。

現在はこの生地が使われています。

ところでこのタバコの穴あき、グリーン車ではほとんどなく、普通車でしか起こりませんでした。
グリーン車に乗るような人が全てマナーがいいとも限らないと思うんですが・・・

ちなみに私はこのモケット地でクッションを作りました。(笑)

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